セブンのビジネスモデルにメス (セブン判決その2)
この判決をお読みになった方は、セブンのように名の通った大企業がこんな重要な点についてなぜ説明をしなかったのだろうか、値下げ販売をさせないためになぜ圧力までかけたのだろうかと疑問に思われたかもしれません。
答えは簡単です。これがセブンのビジネスモデルの一つだからです。セブンは、ローソン、ファミリーマートその他のフランチャイズチェーンと激しく競争をしています。みなさんの自宅や職場の近くで、セブンのコンビニと他のチェーンのコンビニが近い場所に出店していないでしょうか?どこのチェーンも売れそうな地域を見つけると、そこに加盟のコンビニをどんどん出店するという事業展開をしています。セブンは、各店舗が現状の売上に対応した仕入をしていくというだけではこの競争に勝てない、各店舗が積極的に事業拡大する必要がある、そのためには商品の仕入を増やして、店内に商品があふれるほど置いているという状況をつくり、販売していくことだと言うのです。しかし、そうすれば、どうしても売れ残りが出て廃棄が出ます。廃棄商品のリスクを一切負わずに、加盟店の負担において積極的な攻めの販売のための仕入れをさせることができるというのがセブン方式です。この方式だと、廃棄ロスがいくら出ても加盟店負担ですから、セブンの腹は傷みません。また、同じ売上額であっても、堅めに仕入れて廃棄が少ない場合より、多めに仕入れて廃棄をたくさん出した方がロイヤリティが増えるといううまみもあるのです。そこで、セブンは加盟店に対し仕入れを増やさせるという方針をとったのです。セブンの従業員が加盟店を訪問して、加盟店に仕入れを増やすよう厳しく要求し、圧力をかけていったのです。セブンは、他社との競争を加盟店だけの負担で勝ち抜こうとしたのです。当然のことながら、セブンは他のチェーンに較べて大量の廃棄を出しています。自然環境を守り、資源を無駄遣いしないという社会の流れに完全に逆行しています。
それでは、なぜセブンはセブン方式を説明しなかったのでしょうか? セブンが加盟店にきちんと説明すると、加盟店は負担が増えるのを恐れて仕入を増やさなくなるからです。だからできるだけ説明しないことにしたというわけです。加盟店は黙ってセブンの従業員のカウンセリングに従って、攻めの仕入と販売という経営すればいいと考えているのです。
ところが、この方式には一つだけ弱点がありました。加盟店が値下げ販売を行って廃棄を減らされるとセブンの利益が減るということなのです。加盟店も、売上の割には店の利益が少ないと感じ始め、試行錯誤した結果、値引き販売にたどりつきました。セブンはこの弱点を克服するため、目覚めた加盟店のオーナーにカウンセリングという名の下に、値引き販売をさせないという圧力をかけて、可能な限り値引き販売をやめさせることにしたのです。その意味で、セブンの説明義務違反と値引き販売の制限とは裏腹の関係にあります。圧力をかけても言うことを聞かないオーナーに対しては、セブンは、経営方針と合わないという理由で加盟店契約を解消するという最終手段に出てきます。それが怖いため、加盟店はなかなか値引き販売をできないというわけです。
しかし、中には勇気のあるオーナーもいて、セブンのやり方は独禁法違反だとして公正取引委員会に訴えでた結果、平成21年6月、公正取引委員会は、セブンに対し優越的地位を濫用したとして排除措置命令を出したのです。
セブンは、これをきっかけに各加盟店が続々、値引き販売に踏み切るのではないかとおそれ、廃棄小品の原価の15%をセブンが負担し、値引き販売をいくつかの条件の下で認めるという方針変更を行い、何とかこのビジネスモデルを維持しようとやっきになっています。
こうした状況の中で出された今回の判決は、初めて説明義務違反と販売価格拘束の違法性を認めていて、セブンのビジネスモデルの一部を違法と判断したという意味で画期的な意義を有しています。
セブンは、この福岡判決を「承服できない」とコメントしたと報道されていましたが、これは本音だろうと思います。そうでなければ、セブン方式についての説明をパンフレットにして配布するなどの変更をしていたはずだからです。セブンはかつて最高裁判所の補足意見で、契約書は明確性を欠いているとの指摘を受けながら、わかりやすいものに変えようとしませんでした。この問題はセブンのビジネスモデルに関わることから、もっと追いつめられないかぎり、変更はしないのではないかと思います。原発事故で経験したように、私たちの社会や組織は、痛い目にあわない限り、不都合な真実に対して向き合おうとしない傾向がありますが、セブンも同様のようです。
これからコンビニを経営しようと考えている方は、こうしたビジネスモデルまでよく理解した上で契約することをお勧めします。すでに契約された方は、地元の弁護士と相談しながら、値引き販売を始められてはいかがでしょうか? 思っていた以上に店の利益が増えるかもしれません。
セブンーイレブン福岡判決(その1)
1 9月15日、福岡地裁は、セブンーイレブンに対し、元加盟店のS氏に、損害賠償として220万円の支払いを命じる判決を出しました。この事件は、私が弁護団の一員として3年間、取り組んだ事件なので、2回に分けて紹介したいと思います。今回は、事件の内容と判決を紹介し、2回目に、事件の背景と判決の意義について書きたいと思います。
2 Sさんは、福岡市で平成9年4月から平成20年1月まで、セブンーイレブン・ジャパン(以下、「セブン」と言います)との間で、加盟店のフランチャイズ契約を結んで、コンビニの店を経営しました。セブンに対するSさんの請求はいくつかありますが、ここでは2点だけ挙げます。1点目は、セブンは、Sさんにロイヤリティ(チャージ)の算定方式について説明義務を果たさなかったこと、2点目は、セブンは、デイリー商品について販売価格を拘束して、値下げ販売をさせなかったことです。
3 判決は、第1点について、「チャージは、加盟店に対する商号・商標等の使用の許諾やノウハウの供与に対する対価として本部に支払われるものであり、本部に対する加盟店の負担となるものであるところ、その算定方法は。加盟店がフランチャイズ店の経営によってどの程度の利益を得られるかを予測し、加盟店基本契約を締結すべきか否かや、フランチャイズ店をどのように経営すべきかを的確に判断するために重要な事項といえる。したがって、当該契約の契約内容、契約締結前後の経緯、加盟店になろうとする者又は加盟店の知識及び経験等の事情によっては、本部は、当該契約に付随する信義則上の義務として、加盟店になろうとする者又は加盟店に対し、チャージの算定方法について説明すべき義務を負う場合があるというべきである。」、「そして、被告方式においては、チャージ算定の基礎となる売上総利益の算出において、総売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が控除されるため、一般的な方式、すなわち売上総利益の算出において売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸原価は控除しない方式と比較して、加盟店にとって不利な方式となっている。このように、一般的な方式と比較して廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価に相当する分だけロイヤリティの額が高くなることについては、本件契約書から明確に読みとることができず、加盟店となろうとする者が自らこのことを理解するのは容易でないといわざるを得ないから、被告としては、上記のような被告方式が一般的な売上総利益の算定方式とは異なることについて、加盟店となろうとする者が理解できるように配慮する必要があるといえる。以上述べたことからすれば、被告は、原告に対し、チャージの算定方法(被告方式)について、チャージ算定の基礎となる売上総利益の算出において売上高から控除される「売上商品原価」には廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれないことを明確に説明すべき義務を負うものというべきである。」とし、被告は原告に契約締結前から契約締結後にかけて、被告方式について明確な説明をしなかったとして、被告は説明義務に違反したと判断した。しかし、原告は、契約締結前に、被告の担当者から、廃棄ロス原価が営業費の一つとされ、これをコントロールすることが利益につながることについて説明を受けて契約を締結したものであるとし、原告が被告から被告方式について説明を受けていなかったからといって、廃棄ロスを減らすために値下げ販売をおこなうことに思い至らなかったとはいうことができないとして、説明義務違反と損害との間の因果関係を否定しました。
第2点について、判決は、「・・・これらの事実によれば、被告は、原告に対して値下げ販売をやめるように指導することで、原告に対してその販売する商品の販売価格を標準小売価格に維持しようとし、原告の商品の販売価格の自由な決定を拘束したものというべきであり、相手方とその取引の相手方との取引を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引を行っているものと認められ、かつ、上記拘束条件が原告の事業活動におおける自由な競争を阻害するおそれがないとはいえないことは明らかで、被告の上記行為に正当な理由があるものということはできないから、「不公正な取引方法」13項の拘束条件付取引に該当する」、「被告が原告に対して値下げ販売をやめるように指導した行為は、拘束条件付取引という不公正な取引方法を用いたものというべきであり、独占禁止法19条に違反するものと認められる」と判断し、被告に対し原告に金220万円の賠償をするよう命じました。
この判決は、Sさんが請求した額のわずか8%しか賠償を認めませんでした。通常の民事事件では実質的には敗訴です。しかし、本件に限っては、私たち弁護団は画期的な判決と評価しましたし、セブンはおそらく負けたと感じていることでしょう。その理由は次回説明します。
社団医療法人の出資持分
力が抜けない
これまで結構忙しい日々を過ごしてきたが、還暦を過ぎてから、人生の残り時間が少なくなっていることをにわかに痛感し、持ち時間をなるべくエンジョイしようと気持ちが変わってきた。人生の楽しみ方は人それぞれだと思うが、私が楽しんでいる一つに生きているうちに泳げるようになる、というのがある。
昨年の秋ごろ、市営プールでやっている週2回の大人水泳教室に通い、初歩からやり直した。クロールで25mというのが当面の目標である。
2ヶ月間の教室を終えても目標に至らず落第したが、その後も週2~3回プールに通っているうち、何とかときどきは25m届くようになった。といっても、やっとかっと息も絶え絶えに届くのであって、全く余裕がない。
何とか泳ぎに改良の余地はないかと思って、同じプールで土曜にやっているワンポイントレッスンで、水泳達人に自分の泳ぎを見て貰った。一目見てのご託宣は、「あなたの泳ぎ?は、力むばかりで、体がまるで浮いていない。沈んでいる体を力で引っ張り上げようとするので疲れるはず。」、というのである。「泳ぐ以前に、力を抜いて、浮くことを体で覚えなさい」というわけだ。
何をするにも力を抜いてやるのがよいというのは頭では分かっている。しかし、何をする力が抜けない、力が入るというのは私の癖なのだ。ずっと以前、ゴルフを始めようとしたことがあるが、きちんと基礎を習わなかったこともあって、どうしても力を抜くことが出来ず、途中で継続を断念した。
今もプールに通って、専ら、浮き身の練習に時間を使っている。バタ足で進むだけなら結構行く。しかし、腕や呼吸が加わると、どうしても力が入り、楽にはいかない。仕方がない、残り時間も長くはない。楽な泳ぎの目標は断念して、碁をもう少し強くなるという次の課題に転換するか。しかし、そちらのほうも、死んだ石を何とか復活させようと力んでしまう癖がある。力が抜ける展望があるわけではない。
どうしよう。しかし、まあいいか。ことによっては、力が入ることがいいこともあるかも知れない。そうでなくとも、力が入ったままの息絶え絶えをも、気持ちの持ちようでは、結構楽しめるかも知れない。そしてそのうち、力が抜けることもあるかも知れない。どうせ時間がないのだから、何でも楽しんでしまおう。
遺留分減殺請求と価額弁償
個人事業主を「労働者」と判断した最高裁判決(最高裁平成23年4月12日)
業務委託契約を結んで業務を行っている個人事業主も労働者に当たるかが争われた事件で、最高裁が労働者に当たると判断を下したということで、新聞に大きく報じられました(平成23年4月12日)。 この日、最高裁は、同じ争点をもつ2つの事件について判決をしました。1つは、住宅設備のメンテナンス会社と業務委託契約を結んでいる個人事業主のケースで、もう1件は、新国立劇場とオペラ公演に出演する1年ごとの契約を結んでいた合唱団員のケースです。いずれも労働組合に加入し、その組合が会社に団体交渉を申し入れたところ、会社に拒否されたので、労働委員会に不当労働行為(労働組合法7条二号で、使用者は、労働者の代表者と団体交渉を拒否することが禁止されています)で救済を求めた事案です。
この2件の裁判で何が争点になったかというと、契約上、会社(以下、2番目のケースでは劇場と読み替えて下さい)からの依頼に対し、事業主は断ることができることになっていること、業務の日時、場所、方法等について会社の指示監督を受けないこと、独自に営業活動を行って収益を挙げることが可能であること、などの独立性があるように規定されていたのですが、実態はそうではなく、会社の業務の不可欠な労働力として位置づけられ、契約内容も会社が一方的に決め、事業主は会社からの依頼に従わされていたというように、契約と実態が異なっている場合に、契約内容から形式的に独立事業者と見るのか、実態から、労働者と見るのか、でした。
最高裁判所は、実態を重視し、①会社の業務遂行に不可欠な労働力として、組織に組み入れられていたこと、②当事者の認識や契約の実際の運用において、会社の依頼に対し、事業主は応ずべき関係にあったこと、③会社が契約内容を一方的に決めていたこと、④事業主の報酬は労務の提供の対価となっていたこと、⑤業務において、会社の指揮監督の下で、時間的・場所的にも一定の拘束を受けていたこと、を理由として、いずれも労働組合法上の労働者であると判断し、会社は労働組合の団体交渉に応じなければならないとの判断を下しました。
この判決は、従来からの学説・判例に従ったものと言えますが、驚くべきなのは、いずれも高等裁判所は、業務処理契約(2件目では出演契約)の解釈から、労働者であることを否定していたことです。高等裁判所は最高裁判所と違って事実審理を行うことを役割としていますが、その裁判所が契約の運用実態、当事者の認識について踏み込まずに、契約の解釈から形式的に判断してしまっているのです。
社会で弱い立場の人が不利益を受けるという事件では、契約上は対等であるように見えるのに、実態は弱い立場の人が不利益を受けるようになっているというケースがよくあります。弁護士としては、その実態をなんとか立証して、不正義であることを暴こうと努力するのですが、なかなか契約の壁が厚いために、これを乗り越えるのに大変苦労します。本件の最高裁判所の判決文を読む限り、会社と事業主との間に使用従属関係という実態があったことはかなり明確なケースだと思えるので、高等裁判所は、もっと実態に踏み込んで判断すべきではなかったという気がします。
なお、本件は労働組合法の不当労働行為に関する判断ですから、この個人事業主が賃金や労働条件を定める労働基準法の関係で「労働者」と判断されたわけではありませんので、ご注意ください。
「敷引特約」の有効性に関する最高裁判決がだされました
生命保険金と遺産分割 (最高裁平成16年10月29日決定)
検事は法律家であるという原点に立ち返るべき!(その1)
最近、被告人の自白調書が争われた恐喝事件で、当時、自白調書を作成した女性検事が裁判所で証人として尋問を受け、その中で、検事が作成した自白調書への署名を被告人(当時は「被疑者」)が断ったところ、女性検事が被告人に「ぶち切れますよ」と言ったため、被告人が自白調書に署名したという記事がありました。
「ぶち切れる」という言い方は、漫画から来た表現だと思うのですが、大げさで、多少可笑しさを伴う感じがあります。ただ、取調べで、女性検事からこう言われると、すごみがあったのかもしれません。
この記事で私が気になったのは、ぶち切れ発言よりも、この女性検事が取調べのときに作成したメモを破棄したことです。最高検から取調べのメモを適正管理するするよう通達があっていたにもかかわらず無視して破棄しているのです。正確な情報かどうかわかりませんが、大半の検事が取調べメモを破棄しているといううわさもあります。もし、事実なら、公益の代表を自負する検事として許されないことです。
ところで、なぜ、検事が取調べメモを破棄するのか。取調べメモを残しておくと弁護人から取調べメモの証拠開示請求を受けたときに提出しなければならなくなり、その結果、裁判所に自白調書を採用してもらえなくなるおそれがあるからです。検事が有罪の立証のために無理なことでもやるという意味で、レベルは違いますが、大阪地検特捜部で証拠を改ざんした事件と共通した問題を感じます。 私は、こうした事態を防ぐためには、一刻も早く、取調べの全面的な可視化をすべきだと考えています。
紛争の解決法
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