法律コラム

離婚 離婚の基礎知識②

投稿者 admin 日時 2016年8月31日

協議離婚届出不受理申出制度

 

離婚の基礎知識①では、日本で認められている離婚の方法についてご説明しました。

 

日本の協議離婚の制度は、極めて簡便なもので、法的機関が関与せず、「離婚届」を作成して戸籍法の定める戸籍事務(市町村)に提出すれば、離婚が成立してしまいます。

そのため、夫婦の一方が、相手方に無断で協議離婚届を行ってしまう可能性もあるのです。

 

相手方に無断でなされた協議離婚届は法的には無効ですが、これが受理されて戸籍に記載されてしまうと、当該戸籍の記載を消除するには、離婚無効の確定判決又は審判を得て戸籍訂正の申請をする必要があり(戸籍法116条)、大変煩雑な手続を踏まなければなりません。

このような事態を防ぐために協議離婚届の不受理の申出制度(戸籍法27条の2第3項~5項)があります。協議離婚届の不受理申出をすると、協議離婚届がなされたとしても、不受理申出をした本人が市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを確認できなければ、協議離婚届が受理されることはありません。

 

なお、一度は協議離婚届の作成に応じて署名・押印したが、その後気が変わり撤回をしたいというケースもあるかと思います。そのような場合でも、その協議離婚届が受理される前であれば、協議離婚届の不受理申出を行い、相手方の意思だけで協議離婚届が受理されるということを防ぐことができます。

 

協議離婚届を無断で提出される可能性がある場合には、事前に協議離婚届の不受理の申出をしておくことが重要です。


離婚 離婚の基礎知識①

投稿者 admin 日時 2016年8月31日

離婚の方法

 離婚とは、婚姻関係を将来に向かって解消することをいいます。

離婚により、夫婦の同居協力義務、婚姻費用分担義務などの権利義務関係が将来に向かって消滅することになります。

 

厚生労働省の平成26年(2014)人口動態統計(確定数)によると、平成26年の離婚件数は 22 万 2107 組で、離婚率(人口1000人あたり)は1.77 でした。

 

離婚制度をどのようなものにするかは、歴史、地域、社会、文化により様々です。

日本では、離婚全体のうち9割程度が協議離婚ですが、海外に目を向けると、協議離婚を認めていないという国もあります。

 

日本で認められている離婚の方法は次のとりです。

 

①協議離婚

夫婦の協議で離婚することができ(民法763条)、婚姻に至る原因等は法的に問題とされません。

協議離婚を行うためには、協議離婚届けを市町村へ提出する必要があります。

 

②調停離婚・審判離婚

協議離婚ができない場合等に、家庭裁判所に対して、調停を申し立てます。この調停において、離婚について合意をすることを調停離婚といいます。

また、家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、離婚の審判を行うことができ、これを審判離婚といいます。実際上は、審判離婚の数は多くありません。

なお、次に述べる離婚訴訟を提起するためには、原則としてまず離婚調停を申し立てる必要があるとされています(調停前置主義)(家事事件手続法257条)。

 

③離婚訴訟による離婚(裁判離婚)

②の離婚手続ができない場合、離婚を求めるためには、家庭裁判所に対し、離婚訴訟を提起することになります。裁判所が、法律で決められた離婚原因(民法770条1項所定の離婚原因)が存在すると認めた場合は、判決で離婚が認められます。離婚訴訟を提起しても必ず離婚が認められるというわけではないのです。

なお、裁判所の手続のなかで、離婚について合意できれば、判決によらず、和解による離婚をすることもあります。


 この判決をお読みになった方は、セブンのように名の通った大企業がこんな重要な点についてなぜ説明をしなかったのだろうか、値下げ販売をさせないためになぜ圧力までかけたのだろうかと疑問に思われたかもしれません。


  答えは簡単です。これがセブンのビジネスモデルの一つだからです。セブンは、ローソン、ファミリーマートその他のフランチャイズチェーンと激しく競争をしています。みなさんの自宅や職場の近くで、セブンのコンビニと他のチェーンのコンビニが近い場所に出店していないでしょうか?どこのチェーンも売れそうな地域を見つけると、そこに加盟のコンビニをどんどん出店するという事業展開をしています。セブンは、各店舗が現状の売上に対応した仕入をしていくというだけではこの競争に勝てない、各店舗が積極的に事業拡大する必要がある、そのためには商品の仕入を増やして、店内に商品があふれるほど置いているという状況をつくり、販売していくことだと言うのです。しかし、そうすれば、どうしても売れ残りが出て廃棄が出ます。廃棄商品のリスクを一切負わずに、加盟店の負担において積極的な攻めの販売のための仕入れをさせることができるというのがセブン方式です。この方式だと、廃棄ロスがいくら出ても加盟店負担ですから、セブンの腹は傷みません。また、同じ売上額であっても、堅めに仕入れて廃棄が少ない場合より、多めに仕入れて廃棄をたくさん出した方がロイヤリティが増えるといううまみもあるのです。そこで、セブンは加盟店に対し仕入れを増やさせるという方針をとったのです。セブンの従業員が加盟店を訪問して、加盟店に仕入れを増やすよう厳しく要求し、圧力をかけていったのです。セブンは、他社との競争を加盟店だけの負担で勝ち抜こうとしたのです。当然のことながら、セブンは他のチェーンに較べて大量の廃棄を出しています。自然環境を守り、資源を無駄遣いしないという社会の流れに完全に逆行しています。

  それでは、なぜセブンはセブン方式を説明しなかったのでしょうか? セブンが加盟店にきちんと説明すると、加盟店は負担が増えるのを恐れて仕入を増やさなくなるからです。だからできるだけ説明しないことにしたというわけです。加盟店は黙ってセブンの従業員のカウンセリングに従って、攻めの仕入と販売という経営すればいいと考えているのです。


    ところが、この方式には一つだけ弱点がありました。加盟店が値下げ販売を行って廃棄を減らされるとセブンの利益が減るということなのです。加盟店も、売上の割には店の利益が少ないと感じ始め、試行錯誤した結果、値引き販売にたどりつきました。セブンはこの弱点を克服するため、目覚めた加盟店のオーナーにカウンセリングという名の下に、値引き販売をさせないという圧力をかけて、可能な限り値引き販売をやめさせることにしたのです。その意味で、セブンの説明義務違反と値引き販売の制限とは裏腹の関係にあります。圧力をかけても言うことを聞かないオーナーに対しては、セブンは、経営方針と合わないという理由で加盟店契約を解消するという最終手段に出てきます。それが怖いため、加盟店はなかなか値引き販売をできないというわけです。


    しかし、中には勇気のあるオーナーもいて、セブンのやり方は独禁法違反だとして公正取引委員会に訴えでた結果、平成21年6月、公正取引委員会は、セブンに対し優越的地位を濫用したとして排除措置命令を出したのです。


    セブンは、これをきっかけに各加盟店が続々、値引き販売に踏み切るのではないかとおそれ、廃棄小品の原価の15%をセブンが負担し、値引き販売をいくつかの条件の下で認めるという方針変更を行い、何とかこのビジネスモデルを維持しようとやっきになっています。

 


    こうした状況の中で出された今回の判決は、初めて説明義務違反と販売価格拘束の違法性を認めていて、セブンのビジネスモデルの一部を違法と判断したという意味で画期的な意義を有しています。


    セブンは、この福岡判決を「承服できない」とコメントしたと報道されていましたが、これは本音だろうと思います。そうでなければ、セブン方式についての説明をパンフレットにして配布するなどの変更をしていたはずだからです。セブンはかつて最高裁判所の補足意見で、契約書は明確性を欠いているとの指摘を受けながら、わかりやすいものに変えようとしませんでした。この問題はセブンのビジネスモデルに関わることから、もっと追いつめられないかぎり、変更はしないのではないかと思います。原発事故で経験したように、私たちの社会や組織は、痛い目にあわない限り、不都合な真実に対して向き合おうとしない傾向がありますが、セブンも同様のようです。


    これからコンビニを経営しようと考えている方は、こうしたビジネスモデルまでよく理解した上で契約することをお勧めします。すでに契約された方は、地元の弁護士と相談しながら、値引き販売を始められてはいかがでしょうか? 思っていた以上に店の利益が増えるかもしれません。


セブンーイレブン福岡判決(その1)

投稿者 admin 日時 2011年10月4日

1 9月15日、福岡地裁は、セブンーイレブンに対し、元加盟店のS氏に、損害賠償として220万円の支払いを命じる判決を出しました。この事件は、私が弁護団の一員として3年間、取り組んだ事件なので、2回に分けて紹介したいと思います。今回は、事件の内容と判決を紹介し、2回目に、事件の背景と判決の意義について書きたいと思います。

2 Sさんは、福岡市で平成9年4月から平成20年1月まで、セブンーイレブン・ジャパン(以下、「セブン」と言います)との間で、加盟店のフランチャイズ契約を結んで、コンビニの店を経営しました。セブンに対するSさんの請求はいくつかありますが、ここでは2点だけ挙げます。1点目は、セブンは、Sさんにロイヤリティ(チャージ)の算定方式について説明義務を果たさなかったこと、2点目は、セブンは、デイリー商品について販売価格を拘束して、値下げ販売をさせなかったことです。

3  判決は、第1点について、「チャージは、加盟店に対する商号・商標等の使用の許諾やノウハウの供与に対する対価として本部に支払われるものであり、本部に対する加盟店の負担となるものであるところ、その算定方法は。加盟店がフランチャイズ店の経営によってどの程度の利益を得られるかを予測し、加盟店基本契約を締結すべきか否かや、フランチャイズ店をどのように経営すべきかを的確に判断するために重要な事項といえる。したがって、当該契約の契約内容、契約締結前後の経緯、加盟店になろうとする者又は加盟店の知識及び経験等の事情によっては、本部は、当該契約に付随する信義則上の義務として、加盟店になろうとする者又は加盟店に対し、チャージの算定方法について説明すべき義務を負う場合があるというべきである。」、「そして、被告方式においては、チャージ算定の基礎となる売上総利益の算出において、総売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が控除されるため、一般的な方式、すなわち売上総利益の算出において売上原価から廃棄ロス原価及び棚卸原価は控除しない方式と比較して、加盟店にとって不利な方式となっている。このように、一般的な方式と比較して廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価に相当する分だけロイヤリティの額が高くなることについては、本件契約書から明確に読みとることができず、加盟店となろうとする者が自らこのことを理解するのは容易でないといわざるを得ないから、被告としては、上記のような被告方式が一般的な売上総利益の算定方式とは異なることについて、加盟店となろうとする者が理解できるように配慮する必要があるといえる。以上述べたことからすれば、被告は、原告に対し、チャージの算定方法(被告方式)について、チャージ算定の基礎となる売上総利益の算出において売上高から控除される「売上商品原価」には廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価が含まれないことを明確に説明すべき義務を負うものというべきである。」とし、被告は原告に契約締結前から契約締結後にかけて、被告方式について明確な説明をしなかったとして、被告は説明義務に違反したと判断した。しかし、原告は、契約締結前に、被告の担当者から、廃棄ロス原価が営業費の一つとされ、これをコントロールすることが利益につながることについて説明を受けて契約を締結したものであるとし、原告が被告から被告方式について説明を受けていなかったからといって、廃棄ロスを減らすために値下げ販売をおこなうことに思い至らなかったとはいうことができないとして、説明義務違反と損害との間の因果関係を否定しました。

   第2点について、判決は、「・・・これらの事実によれば、被告は、原告に対して値下げ販売をやめるように指導することで、原告に対してその販売する商品の販売価格を標準小売価格に維持しようとし、原告の商品の販売価格の自由な決定を拘束したものというべきであり、相手方とその取引の相手方との取引を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引を行っているものと認められ、かつ、上記拘束条件が原告の事業活動におおける自由な競争を阻害するおそれがないとはいえないことは明らかで、被告の上記行為に正当な理由があるものということはできないから、「不公正な取引方法」13項の拘束条件付取引に該当する」、「被告が原告に対して値下げ販売をやめるように指導した行為は、拘束条件付取引という不公正な取引方法を用いたものというべきであり、独占禁止法19条に違反するものと認められる」と判断し、被告に対し原告に金220万円の賠償をするよう命じました。

    この判決は、Sさんが請求した額のわずか8%しか賠償を認めませんでした。通常の民事事件では実質的には敗訴です。しかし、本件に限っては、私たち弁護団は画期的な判決と評価しましたし、セブンはおそらく負けたと感じていることでしょう。その理由は次回説明します。


医療法人の出資持分

投稿者 admin 日時 2011年7月28日

医療法人には財団形式の法人と社団形式の法人とがあるのはご存知のとおりです。その社団医療法人には、出資持分の定めがあるものと定めがないものとがあるのも常識でしょう。しかし、医療法人のことを決めている医療法にはこの出資持分についてほとんど規定らしいものはなく、出資持分の取扱いはその社団医療法人の定款で自由に決めてよいということになっています。
 
 
例えとして、社団医療法人と株式会社を比較してみましょう。株式会社の最高決議機関は「株主総会」で社団医療法人のそれは「社員総会」ですから、会社の「株主」に対応するのが医療法人では「社員」です。この「社員」の資格は、定款で決めるようになっているのですが、出資持分の取扱いを自由に決めることが出来るのですから、社員の資格も出資持分権者であるかどうかと無関係に決めることが出来ます。もちろん、定款で社員は出資持分が必要と決めることも出来ます。ただ、法律で社員の議決権は各1個と決められています。ですから、株主がその株数の多さに比例して議決権を行使出来るのとは異なり、出資持分の多さは議決権とは無関係なのです。このように法律は出資持分にまことに冷淡な態度です。
 
 
これにひきかえ医療法人の出資持分者の存在に好意を寄せているのが税務当局です。それは、税務当局は出資持分を資産価値あるものと捉え、出資持分が動く場面で出動出来る、つまり、出資持分関係者に対する課税が出来ると考えているからなのです。
 
 
 
この課税問題に関連して、私が不合理だなと思っていることを一つご紹介したい。
一つは、出資限度額法人における出資持分権者の払戻請求に関連した課税です。医療法人では配当が禁止されているので、一般に医療法人では利益が内部留保され、その資産が設立当初の出資総額に比して膨れあがっていることがほとんどです。そういう医療法人などで出資持分に応じた払戻請求を受けた場合は、払戻額は当初の出資額に比べて利益留保分だけ大きくなります。この増大した払戻を受けた者には、その増大分が配当として課税されます。それはいいのですが、出資持分の割合が大きい場合には、払戻原資が不足して医療機関を維持出来ないことも起こり得ます。
 
 
そのようなことを防止するために考えられたのが、出資持分の払戻請求を受けた際に旧厚生省のモデル定款では、医療法人の解散の際の残余財産の分配についても、当初の出資額の限度に限る、と規定するようになっています。このような医療法人を出資限度額法人と呼んでいます。
 
出資限度額法人の場合、出資持分権者が払戻請求をしても、その払戻は当初の出資額で済みます。つまり医療法人としては、利益留保分のその持分割合だけ払戻しをせずに済んだのです。問題は、その払戻をせずに済んだ分だけ、他の出資持分権者が利益を得たとみなされて、贈与税課税されるということなのです。他の持分権者も、将来払戻請求をしても、得られるのは出資額に限られるはずです。それなのに、他の人の払戻請求の反動で贈与財課税を受けるとは、不合理きわまりないと思います。
  
税務当局は、医療法人の定款は変更可能だから、出資額限度法人から本の限度なし法人にいつでも戻れるからなどと理由を述べているようですが、全く説得力はありません。
 
わたしの知る限りではこの課税を争ったケースはないようです。身近にそのようなケースが起これば是非争ってみたいと思っているのですが。
  
ちなみに、出資限度額法人への定款変更は、社員総会の決議で行なわれます。その変更は出資持分権者にとって払戻額が少なくなるという点では不利益な変更ですから、社員総会で定款変更が決まっても、全ての出資持分権者の同意がいるのではないかという疑問が生じます。しかし、判例は、出資持分限度額法人への定款変更は必ずしも出資持分権者の同意を要しないという傾向のようです。
 
 
当事務所では,医療法人の出資持分に関する問題を重点的に扱っており,随時ご相談をお受けしています。
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力が抜けない

投稿者 admin 日時 2011年6月28日

これまで結構忙しい日々を過ごしてきたが、還暦を過ぎてから、人生の残り時間が少なくなっていることをにわかに痛感し、持ち時間をなるべくエンジョイしようと気持ちが変わってきた。人生の楽しみ方は人それぞれだと思うが、私が楽しんでいる一つに生きているうちに泳げるようになる、というのがある。

昨年の秋ごろ、市営プールでやっている週2回の大人水泳教室に通い、初歩からやり直した。クロールで25mというのが当面の目標である。

2ヶ月間の教室を終えても目標に至らず落第したが、その後も週2~3回プールに通っているうち、何とかときどきは25m届くようになった。といっても、やっとかっと息も絶え絶えに届くのであって、全く余裕がない。

何とか泳ぎに改良の余地はないかと思って、同じプールで土曜にやっているワンポイントレッスンで、水泳達人に自分の泳ぎを見て貰った。一目見てのご託宣は、「あなたの泳ぎ?は、力むばかりで、体がまるで浮いていない。沈んでいる体を力で引っ張り上げようとするので疲れるはず。」、というのである。「泳ぐ以前に、力を抜いて、浮くことを体で覚えなさい」というわけだ。

何をするにも力を抜いてやるのがよいというのは頭では分かっている。しかし、何をする力が抜けない、力が入るというのは私の癖なのだ。ずっと以前、ゴルフを始めようとしたことがあるが、きちんと基礎を習わなかったこともあって、どうしても力を抜くことが出来ず、途中で継続を断念した。

今もプールに通って、専ら、浮き身の練習に時間を使っている。バタ足で進むだけなら結構行く。しかし、腕や呼吸が加わると、どうしても力が入り、楽にはいかない。仕方がない、残り時間も長くはない。楽な泳ぎの目標は断念して、碁をもう少し強くなるという次の課題に転換するか。しかし、そちらのほうも、死んだ石を何とか復活させようと力んでしまう癖がある。力が抜ける展望があるわけではない。

どうしよう。しかし、まあいいか。ことによっては、力が入ることがいいこともあるかも知れない。そうでなくとも、力が入ったままの息絶え絶えをも、気持ちの持ちようでは、結構楽しめるかも知れない。そしてそのうち、力が抜けることもあるかも知れない。どうせ時間がないのだから、何でも楽しんでしまおう。


遺留分減殺請求と価額弁償

投稿者 admin 日時 2011年6月15日

遺留分減殺とはどういうものかという点は、別にご説明していますのでご参照ください。要するに、遺言な生前贈与などで、自分の遺留分(法定相続分の半分)を侵害された相続人が、貰い過ぎの人に、侵害された遺留分が回復されるまで、貰い過ぎ分を返還せよと求める手続です。

貰いすぎた中には、不動産があるかも知れませんし、あるいは例えば宝石があるかも知れません。侵害された遺留分を満足する限度で返還を求めるには、多くの場合、その物全部ではなく、その一部、すなわち持分を返還せよということになる場合が多く、その請求が認められれば、その不動産や宝石についての共有状態が生じることになり兼ねません。

そこで、遺留分権利者には、共有状態になることを避けるため、その対象物を選んで、その物について物(やその持分)を返還する代わりに、その代金を支払う、という価額弁償を態度を取ることが認められています。これを価額弁償と言います。

 遺留分減殺請求を受けた場合に、初めから対象物を選んで、ではお金で返そうという態度表明をすることが出来ます。そして、遺留分権利者も、ではお金を貰えばよいという態度を示した場合は、そのものについての遺留分減殺請求の権利は、確定的に代金請求の権利に変わり、裁判としても代金の支払を請求するものになります。また、代金額が争いになる場合には、遺留分義務者のほうから代金額確認の訴訟を起こす利益があるとするのが最高裁判例です(最高裁平成21年1月24日)。

遺留分減殺の意思表示をしても、遺留分義務者が何の反応もしないとか、遺留分義務を争うとかいう場合には、遺留分権利者が権利行使をしようと思えば、とりあえず家庭裁判所で調停を申立てるか、あるいは地方裁判所で遺留分減殺の訴訟を起こすかしなければなりません。

このような場合、訴訟のテーマは、原則に戻り、貰い過ぎ分の物を返還せよという請求になります。これに対して、遺留分義務者が、貰い過ぎの内容などを争うだけで、前術の価額弁償の抗弁を提出しない場合には、裁判の結論は、貰い過ぎがあったかどうかなどを判断して、請求のうちの全部あるいは一部の返還を命ずるか、あるいは請求を棄却するか、のいずれかになります。

それでは、遺留分義務者が、返還せざるを得ない貰い過ぎの物について価額弁償をしたいと思う場合、いつまでにどのような主張をすればよいのでしょうか。この問題についてはいろいろな変遷がありましたが、最近の最高裁判例(最高裁平成9年2月25日)によりほぼ確定しました。

その内容は、控訴審の口頭弁論が終わる前までに、遺留分義務者が、代価弁償をしようとする物を決めて、「これらについて裁判所が定める金額で価額の弁償をする」という抗弁を提出したときは、裁判所は、口頭弁論終結時を基準として価額弁償すべき金額を決めて、しかし、単にその金額の支払を命ずるのではなく、「その金額を支払わなかったことを条件として、(元の)現物返還請求を認める」判決を出すべきである、というものです。

ですから、遺留分義務者が価額弁償の抗弁を出す際には具体的金額まで提示する必要はありませんが、裁判所は対象物の時価について何も知識がないわけですから、当事者双方は、その価額についてのあれこれの資料を提出する必要があるでしょう。それでも時価がはっきりしない場合には、裁判所において時価を鑑定により定めることもあり得ます。その価額の基準時はその裁判の口頭弁論終結の時点となります。

この価額弁償の抗弁は、貰いすぎであるということを争いながら、その点で不利な判断が出ることに備えて提出しておく(予備的抗弁といいます)ことも出来ます。

上述の判決は、条件付の認容判決ですから、これが確定した場合には、遺留分権利者は強制執行が出来ます。ただし、条件となっている遺留分義務者の代金支払は、払った者が支払の証明をすることは簡単ですが、条件を科されている権利者のほうで支払がないという証明をすることは出来ません。自分は貰ってないと本人が言うだけでは証明とはなりません。

そこで、民事執行法は、債務者の証明すべき事実のないことが条件となっている場合、強制執行に際する執行分付与申立の際、裁判所書記官が債務者に対し一定の期間を定めてその事実を証明する文書を提出することを催告し、債務者がその期間内にその文書を提出しないときに限り執行分を付与する(そして、強制執行を進行させる)ことを定めています(同法174条3項)。逆に、遺留分権利者からすれば、判決が金額が決まってからはいつでも、遅くともこの催告を受けて期間が経過する前まで、お金を支払った証明を提出して、物の返還の強制執行を止めることが出来ます。相手がお金を受取らないときは供託することで支払に代えればよいのです。

ただ、遺留分義務者が価格弁償の意思表示をしていないのに、遺留分義務者のほうから金銭弁償の請求をすることは出来ません。遺留分権利者からは、あくまで、現物の減殺請求が出来るだけなのです。

 遺留分減殺請求による貰い過ぎ現物(例えば不動産)の返還請求が行なわれた場合、結果として遺留分権利者と遺留分義務者の持分による現物の共有状態が起こる可能性があります。ただ、共有のままではその現物(例えば不動産)の管理や収益に不都合が生じますので、共有状態を解消することが望ましいでしょう。

共有状態の解消のためには、まず、当事者で解決方法を協議することが必要です。しかし、どうしても協議による共有状態解消の解決が出来ないときは、訴訟により共有物解消を求めることが出来ます。裁判所は、これを一方の所有にして他方に適宜な代償金を支払わせるとか、一方の所有にすることが適当でないときは競売に付して代金を持分に応じて分けるとか、種々の方法により共有状態を解消することになります。

遺留分減殺の手続や裁判は、その権利の存在の有無や、減殺対象の選択など、複雑ですので、問題にぶつかった方は弁護士に相談をすることをお勧めします


 業務委託契約を結んで業務を行っている個人事業主も労働者に当たるかが争われた事件で、最高裁が労働者に当たると判断を下したということで、新聞に大きく報じられました(平成23年4月12日)。 この日、最高裁は、同じ争点をもつ2つの事件について判決をしました。1つは、住宅設備のメンテナンス会社と業務委託契約を結んでいる個人事業主のケースで、もう1件は、新国立劇場とオペラ公演に出演する1年ごとの契約を結んでいた合唱団員のケースです。いずれも労働組合に加入し、その組合が会社に団体交渉を申し入れたところ、会社に拒否されたので、労働委員会に不当労働行為(労働組合法7条二号で、使用者は、労働者の代表者と団体交渉を拒否することが禁止されています)で救済を求めた事案です。

 この2件の裁判で何が争点になったかというと、契約上、会社(以下、2番目のケースでは劇場と読み替えて下さい)からの依頼に対し、事業主は断ることができることになっていること、業務の日時、場所、方法等について会社の指示監督を受けないこと、独自に営業活動を行って収益を挙げることが可能であること、などの独立性があるように規定されていたのですが、実態はそうではなく、会社の業務の不可欠な労働力として位置づけられ、契約内容も会社が一方的に決め、事業主は会社からの依頼に従わされていたというように、契約と実態が異なっている場合に、契約内容から形式的に独立事業者と見るのか、実態から、労働者と見るのか、でした。


 最高裁判所は、実態を重視し、①会社の業務遂行に不可欠な労働力として、組織に組み入れられていたこと、②当事者の認識や契約の実際の運用において、会社の依頼に対し、事業主は応ずべき関係にあったこと、③会社が契約内容を一方的に決めていたこと、④事業主の報酬は労務の提供の対価となっていたこと、⑤業務において、会社の指揮監督の下で、時間的・場所的にも一定の拘束を受けていたこと、を理由として、いずれも労働組合法上の労働者であると判断し、会社は労働組合の団体交渉に応じなければならないとの判断を下しました。
 この判決は、従来からの学説・判例に従ったものと言えますが、驚くべきなのは、いずれも高等裁判所は、業務処理契約(2件目では出演契約)の解釈から、労働者であることを否定していたことです。高等裁判所は最高裁判所と違って事実審理を行うことを役割としていますが、その裁判所が契約の運用実態、当事者の認識について踏み込まずに、契約の解釈から形式的に判断してしまっているのです。


 社会で弱い立場の人が不利益を受けるという事件では、契約上は対等であるように見えるのに、実態は弱い立場の人が不利益を受けるようになっているというケースがよくあります。弁護士としては、その実態をなんとか立証して、不正義であることを暴こうと努力するのですが、なかなか契約の壁が厚いために、これを乗り越えるのに大変苦労します。本件の最高裁判所の判決文を読む限り、会社と事業主との間に使用従属関係という実態があったことはかなり明確なケースだと思えるので、高等裁判所は、もっと実態に踏み込んで判断すべきではなかったという気がします。


  なお、本件は労働組合法の不当労働行為に関する判断ですから、この個人事業主が賃金や労働条件を定める労働基準法の関係で「労働者」と判断されたわけではありませんので、ご注意ください。


3月、4月は転勤等に伴い異動の多いシーズンですが、これまで借りていたマンションなどの賃貸物件を退去する際には、「敷金がどれくらい返ってくるのか」が気になるところです。

この点、退去後に不動産屋さんから届いた敷金の清算に関する明細などをよく見てみると、「敷引3か月・・・12万円」などの記載を見かけることがあります。この「敷引」とは、預けていた敷金から、家賃の数ヶ月分など一定の金額を予め控除するというものですが、このような「敷引特約」が認められるのか、消費者に一方的に不利益な契約として無効であるかどうかについて、平成23年3月24日に、最高裁判所が初めての判断を示しましたので、ご紹介します。

この判例は、京都市内のマンションのケースで、賃料が9万6000円、保証金(敷金)が40万円・礼金なしで、「敷引特約」では、契約締結から退去までの経過年数に応じて18万円~34万円(賃料の2倍弱ないし3.5倍強)を敷金から控除するとされていました。

賃借人は、2年未満の退去であったにもかかわらず、「敷引特約」に基づき、40万円の敷金のうち21万円が控除され、19万円しか返還されないのはおかしいとして、敷金全額を返還するように裁判を起していました。

最高裁判所は、一般論として、「敷引特約」については、紛争を未然に防止するなどの観点から、原則として「有効」であるとしながらも、敷引金の額が、通常想定される補修費用などの金額と比較して高額に過ぎる場合には、近隣の建物の賃料の相場と比較して大幅に低額であるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条に反し、「無効」であるとの基準を示しましたが、具体的な事案では、敷引金の額が通常想定される補修費用と比較して高額ではないなどの理由により、有効であると判断しました。

 この判例の事案は、敷金から控除する金額を退去までの経過年数に応じて1年未満~5年以上までの6段階で敷引の金額を定めているなど、比較的に細かな「敷引特約」が定められていたケースであり、そのような点が有効との判断に影響したのかもしれません。

いずれにしても、マンションやアパートを借りる際には、退去時の敷金返還に関するトラブルを防ぐ意味でも、賃貸借契約書に「敷引特約」の記載が入っていないか、入っていれば、その内容について、よく確認をする必要があるといえます。

親が亡くなって、その親が契約していた生命保険の保険金受取人として保険金を受け取った場合、それは相続手続とどのような関係があるでしょうか?簡単に解説します。
    
保険金の受取人が亡くなった親の名前になっていたり、相続人と書いてあったりすると、保険金は相続財産の一部となり、その保険金をどのように分けるかというのは遺産分割協議の対象となり、相続人の話合いで決まります。しかし、その受取人が、誰かに特定されている場合、保険金の請求権は受取人の固有の権利で、遺産の受取りではないとされています。
しかし、税務的には、生命保険金が遺産にあたる場合も、受取人が指定されていてその受取人の固有資産に該当する場合も、保険金取得は、相続税として処理される取り扱いになっています。
問題になるのは、相続人の誰かが一人だけ多額の生命保険金を受け取っているような場合です。最高裁の平成16年の決定は、このような場合の考え方について結論を出しています。
 
 
 
この事例は、分割協議が済んでいる遺産が6000万円相当程度あり、遺産かどうかが争われ、結局遺産であることが確定した土地(1149万円)の分割が問題となった時点で、相続人の一人が合計800万円弱の生命保険金を受け取っていることが特別受益に該当するのではないかと、他の相続人が最高裁に不服申立てした事案です。
この最高裁判例は、生命保険金は遺産に属するものではないというそれまでの判例の原則を確認して、この事例の申立を退けています。
ただ、注目されるのは、この判例が、生命保険金を受領した相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が、民法903条の趣旨(特別受益の規定)から考えて、到底是認することが出来ないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、当該保険金を、特別受益に準じて持ち戻しの対象とする(つまり、遺産として取扱う)のが相当、という判断を下していることです。つまり、保険金は原則として遺産には入れないが、特別の場合には遺産の扱いをすることもあり得る、という新しい判例です。
 
この判例は、前記の特段の事情の有無については、保険金の額、遺産の総額に対する保険金額の比率のほか、同居の有無、被相続人の介護に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及びその他の相続人と被相続人の関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきとしています。
 
 
なお、ある相続人の保険金を特別受益に準じて持ち戻しするような場合で、そのほかの相続人が遺留分の侵害を受けている場合には、この保険金を遺留分額算定の基礎に入れることが出来るかどうか、また、遺留分減殺の対象とすることが出来るかどうかという問題がありますが、この判例はそこまでの言及はしていません。
 
 
※ 上記判例全文はこちらから読むことができます。